ー島には「よごれた」ものは何もなく、本当の人間の生活がありそうです。
小説家 三島由紀夫が執筆のために神島を訪れた際、友人である川端康成にあてた手紙の一文です。三島作品の小説「潮騒(しおさい)」の舞台として知られる神島では、漁業を中心とした島の暮らしが今も昔も根付いています。神島では近畿自然歩道が整備されていて、約3時間で島を一周することができます。大自然のスケールにただただ圧倒される、絶景ハイキングへ出かけてみませんか?
最大標高 171m | アクセス 定期船 | 往復距離 4km |
駐車場 有料あり | 往復目安 約3時間 | 公衆トイレ 1ヶ所 |
初心者 おすすめ | おすすめ 春・秋 |
最大標高 171m | アクセス 定期船 | 往復距離 約4km | 駐車場 有料あり | 往復目安 約3時間 | 公衆トイレ 1ヶ所 | 初心者 おすすめ | おすすめ 春・秋 |
往復のハイキング距離と標高データ
※.ハイキングルート計測で活用しているYAMAPは、オフラインの山中でも現在地を確認できる登山アプリです。最新のルート状況をはじめ、全国各地の登山情報を網羅しています。詳細はこちらから。
※.計測時のハイキングルートは灯明山 頂上へと続く入口を一度素通りしてしまったため、監的哨跡付近から再度ルートを戻っています。そのため、上記のグラフに標高約160mの大きな起伏が2つ表示されています。あらかじめご了承ください。
灯明山:標高 約171m
潮騒公園から神島の絶景ハイキングを徹底案内
スタート地点は神島の定期船乗り場を降りてスグの潮騒公園からです。これからどんな絶景が待っているのか、船旅後の準備体操をしてから出発しましょう!
神島では食事処が限られています。神島1周の途中で食べられるお弁当等は、船に乗り込む前に準備しておこう。
定期船に乗り込んだ時から、神島1周絶景ハイキングは始まっています
定期船乗り場のある鳥羽マリンターミナル(佐田浜)から神島 約40分の船旅となります。
2024年11月26日時点では、鳥羽マリンターミナル(佐田浜)からは①7時40分、②10時40分、③14時00分が出発時間です。日帰りで神島1周絶景ハイキングを楽しむ場合、①又は②の船を利用します。
定期船の乗船時間例は以下の通りです。
詳しくは鳥羽市定期船ダイヤをご確認ください。
絶景チェックポイント①
絶景チェックポイント②
絶景チェックポイント③
絶景チェックポイント④
神島の暮らしに触れながら「潮騒公園から八代神社(やつしろじんじゃ)まで」
出発前の準備は万全ですか?潮騒公園付近には、島でただ一つの公衆トイレと自動販売機もあります。これから町中から本格的なハイキングが開始になるので、しっかりと準備を整えておきましょう。
公衆トイレを背にした前方に神島灯台へと続く矢印看板があります。神島1周絶景ハイキングのルートには、至るところに案内看板が設置されています。迷子になることはありませんので、ご安心ください。
漁村らしい世古道(路地)を進むと、石階段エリアに突入します。急な登りですので、自分のペースで登っていきましょう。息が上がってきたら、無理せずに足をとめて後ろを振り返ってみてください。神島の漁村集落と広大な海の景色がエールを送ってくれますよ。
神島灯台へ続く道の途中には、海の神様である「綿津見命(わだつみのみこと)」を祀る八代神社(やつしろじんじゃ)があります。
白い鳥居と木々から差し込む陽の光の様子に触れて、神聖さを感じ取ります。手を合わせて、海の安全や恵みに感謝をお伝えしましょう。
八代神社に手を合わせたら、境内にある神島の子どもたちが手作りした「子どもおみくじ」で運試しです。子どもたちから、どんな言葉を授かるかは引いてからのお楽しみ。
絶景チェックポイント① 神島灯台「海の難所を見守り続けた灯台の景色」
八代神社を後にして、神島灯台へ続く道に戻ります。登りの石階段エリアを抜けると、とても歩きやすい気持ちの良い道が続きます。海側は崖になっていますので細心の注意を払いながら、木々の間から覗く海の光景を楽しんでください。
花々や生き物との出会いも神島1周絶景ハイキングの魅力です。色鮮やかな花々と舞うアサギマダラの様子は、見ているだけで心穏やかになります。
例年、9月下旬から10月上旬頃に見られます。
※.ただし、本記事取材は11月上旬にアサギマダラを撮影しました。アサギマダラの姿を求めて神島を訪れる際は、最新の情報をSNSや登山アプリなどで調べてみることをオススメします。
華麗に舞うアサギマダラの姿を追いかけているうちに、神島灯台に到着しました。神島灯台は海の難所とされる伊良湖水道の安全な航行を見守り続けた灯台です。
そして、こちらが絶景チェックポイントの1つ目 神島灯台「海の難所を見守り続けた灯台の景色」です。
ちょうど大きな船2隻がすれ違う景色に遭遇しました。明治43年(1910年)に点灯してから約110年の時を経て、神島灯台は何隻の船を見守ってきたのでしょうか?また、神島灯台の姿をどれだけの船員たちが船から見上げきたのでしょう。灯台守になった気持ちで遠くの船を眺め、思いを馳せてみてください。
絶景チェックポイント②監的哨跡「180度の大パノラマ!神島随一の景色がここに」
神島灯台の絶景を眺めたら、続いての目的地である監的哨跡を目指します。ここから木々に囲まれた森エリアに突入して、しばらく登坂が続きます。登りとしては、最後の踏ん張りどころです。
灯明山 頂上へ続く道標
森エリアの登り途中に「←監的哨・神島灯台→」の看板があり、手書きの「灯明山↑」の目印を見つけてください。
灯明山 頂上(標高 約171m)
看板から約2分程度で頂上に到着します。海の景色は見えません。頂上にたどり着いた達成感を味わいましょう。
森エリアの標高150m付近に到着したら、ここから一気に下って行きます。足元は綺麗に整備されていて、とても歩きやすい道です。登りに比べると、下りはペースが早くなってしまいがちですので、足をくじかないようにマイペースを心がけましょう。
蜘蛛の巣に引っかからないためには?
生き物が豊かな神島の絶景ハイキングルートには、蜘蛛の巣が張り巡らされてます。特に森エリアでは歩く際には、足元と前を交互に確認しましょう。状況によっては、木の棒などで蜘蛛の巣を払いのけてください。
標高約100m付近まで下れば、監的哨跡に到着します。監的哨跡は昭和4年(1929年)に旧陸軍の軍事施設です。愛知県の伊良湖から撃った大砲の試着弾の着弾点を確認するために建てられたました。三島由紀夫の小説「潮騒」のクライマックスシーンの舞台として有名なスポットです。
監的哨跡の屋上へ登れば、2つ目の絶景チェックポイント「180度の大パノラマ!神島随一の景色がここに」です。伊良湖岬と雄大な太平洋の圧倒的なスケールに、訪れた誰もが息を飲み、そして目を輝かせることでしょう。
監的哨跡から眺める景色は、どの方面を切り取っても絶景です。グングンと進む船を数えてみたり、太陽の光できらめく太平洋を眺めたり、大空を舞う鳥の姿を目で追いかけたり。大きく息を吸い込みながら、神島の絶景を思う存分、楽しんでください。
絶景チェックポイント③カルスト地形「奇岩とニワの浜に打ち寄せる波の音」
監的哨跡から次の絶景ポイントまでは、約10分の下り坂です。足元と前方に蜘蛛の巣が無いかを確認しながら、進んでいきましょう。
森エリアの下り坂を抜けると心地よい波の音が響き、温かな日差しに包みこまれます。
3つ目の絶景ポイント カルスト地形「奇岩とニワの浜に打ち寄せる波の音」に到着です。
カルスト地形は、長い年月をかけて二酸化炭素を含んだ雨水に侵食された石灰岩が、特別な地形として発達したものの総称です。鳥羽市の天然記念物に指定されています。
白い岩肌と鋭利なフォルムに、悠久の時と自然の偉大さを感じとります。ニワの浜に打ち寄せる波の音を聴いて何を感じるのかは、訪れた人の数だけ答えがあります。ただただ息を飲み、目の前に広がる景色を眺めましょう。
カルスト地形付近には東屋があります。神島1周絶景ハイキングではお弁当持参を推奨しています。ランチタイム頃に東屋に到着するスケジュールをオススメします。
ニワの浜やカルスト地形でのランチも◎ただし、風や頭上を回遊するトンビに注意してください。
絶景チェックポイント④漁港周辺「海鳥が舞い、煌めく港」
ここからは神島南の海岸沿いを歩いて、スタート地点の港を目指します。カルスト地形から約5分程歩くと、古里の浜(ごりのはま)に到着します。そこで、古里の浜におりて八畳岩(はちじょういわ)に近づいてみてください。
打ち寄せる波のリズムに合わせて、八畳岩に空いた穴から勢い良く飛沫が吹き出る光景を拝めます。ゴーと唸る波の音と、バシャンと吹き出る飛沫に力強い自然の息吹を感じます。
海岸沿いの道は平坦で歩きやすく、足取りが軽くなります。約10分程歩くと、集落や漁港へと続く最後の登り坂になります。
登坂の途中で歩いてきた海岸沿いの道を眺めて、上がった息を整えましょう。鑑石(かがみいし)まで来たら、最後の登り坂もラストスパートです。
最後の登坂を制覇すれば、残るのは下り坂です。神島の西側から港へ向かうのも良し、集落を通って港へ向かうのも良しです。本記事では集落を通って港に向かいます。
神島の漁村集落に戻ってきました。集落の最上部付近から港を一望すると、ちょうど伊良湖岬へ向かう伊勢湾フェリーを見つけました。
神島1周絶景ハイキングでは、自然道もさることながら集落のせこ道を歩くことも楽しさの一つです。カラフルな神島の家の屋根を眺めながら、島に流れる穏やかな時間を感じましょう。
最後の絶景ポイント 漁港周辺「海鳥が舞い、煌めく港」に到着です。
スタート地点に近い定期船乗り場を望む場所。神島1周を終えてから、何気なく港沿いを散策していて遭遇した景色です。神島では当たり前で日常の光景である港の景色は、神島灯台・監的哨跡・カルスト地形で眺めた景色同様に特別に感じました。
神島の暮らしに触れ、小説家 三島由紀夫の心情に思いを重ねる
小説家・三島由紀夫は神島に滞在し、代表作「潮騒(しおさい)」を執筆しました。潮騒とは、大きな波の音や響きを意味します。この島に滞在すると、都会の喧騒から離れ、自然の中で波の音が心地よく響く、島特有のゆったりとした時間の流れを感じられます。
小説「潮騒」では、若い漁師と海女の純愛物語が描かれると共に、漁業を中心とした共同体意識を持つ島民の暮らしがリアルに描写されています。小説に登場する風景もそのまま残されており、実際に物語の舞台を歩くことができます。狭い路地に漂う海風の香り、静寂に包まれた神社、そして高台から見渡す広大な海の景色。神島では何気ない日常に触れることで、ここでしか味わえない感動や発見があなたの心を満たしてくれるでしょう。
定期船を待つ間で、漁港を散策してみよう!
約3時間の神島1周絶景ハイキングを終えた後にオススメしたいのが、神島の漁港散策です。漁港の雰囲気を感じたり、海を覗いて魚を探してみたり、釣り人の釣りの様子を見学したりと見どころが満載です。定期船の乗船時間まで、ゆったりと神島での時間を楽しみましょう。
帰りの定期船で眺める絶景もお見逃しなく
神島から鳥羽マリンターミナル(佐田浜)行きの最終便は15時40分です。神島1周絶景ハイキングのフィナーレを季節によって変化する海の景色で飾ってください。
神島1周絶景ハイキング ご参考Q&A
車はどこに駐めようかな?
一番近いのは鳥羽マリンターミナル近くの「佐田浜駐車場」で、割安なのはJR鳥羽駅前付近の有料駐車場がオススメだよ。
お弁当はどこで買おう…
AM10時オープンの鳥羽マルシェや鳥羽駅内にコンビニがあるよ。
電車旅で荷物がいっぱい。持ち運びながら日帰りハイキングはできないよね…
そんな時は鳥羽マリンターミナルに設置されたロッカーが便利です。